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DESIGN






※現パロ・即物的エロ





隣に住む男が、何を思って自分などに執着するのか、佐助には全く以て理解ができなかった。

彼は強面ではあるが俳優並の容貌で、左頬に一筋走る傷さえも美点のひとつに数えられるほどの美貌を持つ。加えて小説を書く。 出版界大不況のご時勢に、専業物書きというだけで希少価値が高く、教養人や文化人といった極めて少ない人間にしか与えられない称号を手にしているのだ。 彼の片倉小十郎という名は、世間の文学愛好者の間で着実に根付いている。そんな優良物件が、何故隣人のしがない同性のwebデザイナーを手込めにしているのか。

執着、と言ったのは、肉体に対しての意味で、佐助に恋人だとかパートナーだとか言った要素を求めているわけではなさそうだった。 否、しかしこれは世間的に見て、立派なゲイカップルではなかろうかとも思うのだ。セックス以外のことも、日常的にしている。 ただ電話で話したり、メール交換したり、料理を作ったり、映画を見たり、抱き合って眠ったり。 あれ、これってカップルじゃない?と思えど、相手から愛の告白をされてもいなければこちらからしてもいない。 異性なら言葉など要らないだろうが、こちらは今まで普通に異性愛者として生きてきた男同士なのだ。それが急に、しかも予想以上に持続している。

この関係が終わるのは、どちらかに女ができたときなのだろう。だが正直、その機会が佐助には何度かあった。女性に告白されたことも、あった。 見目はいいし、性格も悪くないので付き合うにはもってこいの相手だったのに、佐助の脳裏には隣人の顔が浮かんで、ほとんど考える間もなく彼女を袖にしてしまった。 きっと向こうにもその機会は何度もあったはずなのに、どうしてだか片倉は未だに自分と切れようとしない。 どう考えたって、キレイな女を抱く方がずっといいだろうに。全く以て、理解できない。

佐助は在宅勤務のフリーデザイナーなので、家に閉じこもって文章とにらめっこするのが生業の彼とは殆ど毎日会っていた。 今までの恋人とだってこんなに来る日も来る日も顔を合わせることなんてなかった。不思議なことに、毎日見ている顔に飽きが来ることがなかった。 日々、彼は新しい顔を携えて自分の前に姿を現す。

それは今日も同じだった。疲れているのか、行き詰まっているのか、今日の彼はいつもより少しだけ目元の隈が濃く、二重の皺も強調されている。 まだ20代後半の彼の、歳不相応な色気がいつにも増していた。

「丁度よかった。今お茶淹れてたんだ」

そろそろ来る頃合いだと思って、という言葉は呑み込んで、彼の好きな焙じ茶を出そうとしたが、彼は無遠慮にそれを断った。

「後でいい」
「えーなに、後って。冷めちゃう…」
「佐助」

甘く響く低音で呼ばれた自分の名前が、じっとりと耳を這う。水が侵入してきたときのように。

わかっているだろう、と言わんばかりに片倉は佐助の手の甲をなぞった。 何でこんな昼間から盛ってんだこのケダモノは、と思った矢先に、荒々しく唇を奪われ呼吸のリズムを失った。

「ん、っ」

厄介なことに、此方がその気でなくても、キス一つで拒否権を完全に奪われてしまう。 口内に入り込む肉厚な舌が単独の生き物のように動いて、その動きに合わせずにはいられない。 片倉が舌から生み出す快楽は、いっそ化け物じみているほど強烈で、鮮烈なのだ。 悔しいことに、佐助が恍惚として次の一手を出せずにいる間にも、余裕を持って片倉は佐助の薄い背や脇腹を撫で上げ、 ゆっくりと計算された緻密な動きで確実に快楽を引き出していく。 立った儘でこれをされると、どんなに踏ん張っていても足の力ががくんと抜け落ちる。 片倉は崩れ落ちかけた佐助を抱え上げて寝室に運ぶことすらせずに、わざわざ固い床の上に押し倒す。 薄い綿のTシャツがいとも容易く首までたくし上げられ、肋が少し浮き出た貧相な佐助の痩身が白熱の下に晒される。空気に触れただけで皮膚が緊張するのが分かる。 精一杯の妥協として、佐助は骨を擽る片倉の頭をゆるゆると押し返した。

「ね、も、わかったからベッド行こ?ここじゃ痛い…」
「大人しくしてろ」

子供を宥めすかす時のような柔らかく無慈悲な命令が、佐助の意志を丸ごと潰してしまった。 普段はこうではないのだが、時偶片倉は犬のようになる。こうなってしまうときは大体が思想の袋小路に入り込んで、抜け出せなくなった時だ。彼は文章という戦場で闘った後の兵士でしかなく、理性や道徳という概念が吹き飛んでしまっている。いつもは佐助よりもずっと熟成した大人である彼が定期的に見せる子供の面を、こっそり佐助は気に入っているからまたタチが悪い。精神的なイニシアチブを己が握っていることに対して、優越感を覚えるのかもしれない。

「あ、ん…ん、」

片倉の無骨な指が、なくても困らない筈の乳首を押し潰す。するとそこから快楽が生まれるのだから不思議だ。こんなところが気持ちいいだなんて、二十数年生きてきて知る由もなかった。 びりびりと痺れるような感覚が、佐助を襲う。ジーンズを押し上げている下半身がいよいよ苦しくなりはじめた。片倉はそれを察して、佐助のジーンズを脱がせた。単なる衣擦れの音さえもどこか淫猥に響く。

「ひっ、…」

五本の指がねっとりと絡みつくような愛撫。今度こそ淫らな音が響く。その隙間から佐助だけが荒げた息を零す。

「あ、っ、ま、だ…」

いつもより性急に、片倉は佐助の排泄にしか使われない筈の器官に潤滑剤を塗り込んだ。 持参していたのかと思うと、元々身体目的で来訪したのだという事実が浮かび上がって、どんな衝動に駆られてこれをあの整頓された部屋から持ち出したんだろうと佐助は思った。俺なんかを抱きたいと思ったのか、と考えるとやっぱり不思議で、恥ずかしかった。 潤滑剤の冷たさには辟易してしまう。いつまで経っても、気が遠くなるほどの回数を重ねても、慣れることはない。人間は何でも慣れてしまう生き物の筈なのに。 彼の愛撫は、女には到底真似できない。どこをどうすれば感じるのか、同じ男であるからこそ分かるのだろう。緩急のつけ方や、力加減、全てが完璧だ。蕩けそうな快楽と、一気に三本も指を突っ込まれているせいで感じる異物感と痛みが共存して、佐助の細い喉笛からはひっきりなしに声が漏れる。

「あっ、っぁ、…っ!うぁ、あぁ…っ」

片倉が指を上下に動かす度に、腰がびくりと跳ね、彼の右手の中にある自分のものがまた一回り大きくなる。頬が炙られているかのように熱い。ばたばたと両脚が無意味に踊り、フローリングの床を引っ掻いた。

「後ろ向け」

一頻り馴らされた後には、もうすっかり勃起してしまっていた。命令通りに固く冷たい床に四つん這いになり、腰を高く掲げて犬のような格好を取る。ちょっとした振動でも達してしまいそうだった。片倉が視界から消えると、ベルトを取りさらう金属音が聞こえて、衣擦れの音が喧しく響いた。身体に重みがかけられたかと思うと、体内に片倉が這入ってくる。狭い肉壁が悲鳴を上げながらも、肉の塊を受け入れるために拡張していく。

「ん、んっ、は、…ぁっ、あ、あ、」

片倉はあまり余裕がないようで、いきなり腰を激しく振った。がくがくと全身が玩具のように揺れる。身体を支えている肘や膝がひどく痛む。

「んゃっ、あ、そん、なにした、ら、や…っあ、あ…っイ、」

前にも刺激を与えられて、佐助は面白いほど早く達した。力が抜け、床に突っ伏した佐助を労るでもなく、片倉は佐助の腰を抱え上げて、重心を引き上げた。ちょうど片倉の膝の上に後ろ向きに座る格好を取らされて、すぐにまた腰を上下に振らされた。

「や、やぁっ、待っ……」

抗議をしようと開いた口には、片倉の指が咥えさせられた。何だか鉄の味がする。キーボードを叩いていたからだろうか。同じように片倉も、佐助の手を取り、所在なげに動いていた指を 口に含んだ。一本一本丹念に舌で転がされ、舌の動きが指先全体に伝わる。そこから信じられないくらい甘く強い快感が沸き上がる。身体を直接貫かれているのに、一番指先が感じる。

「ん、ぅ、っあ、あ、あぁっ、か、かたく、ら、さ、あっ」

舌を噛みそうになりながら、佐助は自分を抱く男の名を呼んだ。何を求めているわけでもない、ただ、名を呼んでみたかった。

「もっと腰、振れ」
「む、りっ、や、ああっ、あ、…あ、っだめ、だめだめそこ…っあぁあっ、ひゃ、っあぁっ」
「あ?どこがだめだって?」
「そ、こ、ひあぁあっ、そこ、だめ、ぇっ、ほんと、だめだってぇっ…!」

何でそんなところに仕込まれているのか甚だ理解できない快楽の拠点に、ピンポイントで刺激を与えられ、がくがくと頭を揺さぶられたように強い感覚が佐助を襲った。 脳みそが沸騰しそうなほど強烈で、圧迫的で、本能が逃避を警告する。身体は咄嗟に逃げようとするが、片腕で腰を結いつけられていて動けない。

「そこ、ばっか、だめ、ぇ、お、ねが、ぁっ、ゃめ、て、ぇっ…ひぁぁっ!」

佐助はいとも容易く二度目の射精をした。じりじりと迫る射精感も与えられないほど、あっという間だった。佐助はもう二回も極めたというのに、片倉はまだ達する素振りも見せない。 元々遅漏の気はあるが、こういう時は此方が根を上げても留まることを知らない。

「もう二回目か」

くっ、と微かに喉元で笑みを漏らす声が聞こえ、佐助は前のめりに頽れながら羞恥を感じた。まるで自分が圧倒的に劣っているように思えた。いや、実際そうなのだろう。 あられもなく喘いで、腕力がないわけでもないのにしっかりと抵抗もできず、手練手管に呑まれてしまう。己が有していると感じた筈のイニシアチブは見る影もない。 肺全体を使って溺れ死にそうな呼吸を繰りかえす佐助の身体から、片倉は一旦出て行った。息が整うのを待たずに、今度は仰向けに佐助の弛緩しきった赤い身体を床に横たえ、無理に足を開かせる。

「う、そ、待って…お願い、もう、堪忍して…」
「お前はもう何もしなくていい。精々しがみついとけ」

正面から見た片倉の顔はぞっとするほど冷たかった。多少息も髪も乱れているし、頬も上気して汗ばんではいるのだが、情欲とは程遠い表情だった。それを見て、恐怖が少しと、蔑まれ踏みにじられている自分にどこか背徳を覚え、それがどうしてだか快楽にすり替わった。 それでも消耗しきった身体を休めたい思いが強く、足を更に割る片倉の肩に手を置いていやいやと頭を振ってみせたが、その手は無造作に払われて、頭上で大きな掌にまとめられた。

「い、やぁっ、おねが、もうむりぃっ…か、んにん、して…っ」
「黙ってろ」

言うと、片倉は口を塞ぐ意味で深く口づけた。そんなの狡い、と思っている間に熱い塊が蕩けきった秘所に入り込んだ。

「あ、っ、や…ぁっ、ん、ああっ、ぁ、だ、めっ…もっ、と、ゆっ、くり、っ」

懇願も虚しく片倉は律動を緩めない。腹筋がまだ少し硬さの残る佐助の性器を擦って、ひたすらに快楽が与えられ続ける。頭がぼうっと緩みはじめて、ただ地獄の業火のただ中にいるような熱さに身を焦がすしかなかった。

「ひ、あっ、あっあっ、あ、だ、め…っまた、くる…も、いやだぁっ…」
「あ?…しゃあねえな、もっかい出せよ」

押し寄せた三度目の波を訴えると、片倉は膝立ちになって、更に奥深くを攻めた。足の骨が軋んで痛む。身体中の毛が逆立ってびりびりと電流が流れてくる。自分がこれ以上溺れていったらどうなってしまうのか、怖かった。

「や、いやだっ、ぁ、も、こわいっ…イくの、こわいよぉっ…!」
「っ…中に出すぞ」
「あ、ゃあぁっ、な、かは、だめ…っそとに…っう、ぅぅっ…!」

熱く粘度の高い液体が直腸に侵入して、肉をどろどろと溶かす感覚が襲う。当然受け入れ切れず、男の種子は貧相な佐助の尻を伝ってこぼれ落ちていった。少し遅れて佐助も三度目の欲を控えめに放った。腹に精子をぶち込まれたところで、何も起きはしない。女のように妊娠する危険もない。それでも、この時の被征服感は飽くまで男という性を持つ佐助にとっては居たたまれないものだった。身体を思うままに改造されてしまったかのような、人非人にされてしまったかのような、それでいてどこか甘く痺れるような。

「っはぁ…っあ、ぅ…」

ひどい強姦に遭ったあとの被害者よろしく、佐助は荒く息を吐いて弛緩しきった四肢を甘えた猫のようにひくひくと動かした。抗議の言葉を投げかける余裕すらない。すると片倉は、これもまたお決まりのパターンなのだが、汗ばんだ佐助の額を優しく撫で、唇を落とした。

「…すまねえ」

普段は淡々と抑揚のない彼の声に、少しでも申し訳なさが滲み出るだけで、佐助は大概のことは許してしまえる。感情を無視され人形みたく扱われ、身体中の力を奪われ尽くしたとしても。 そしてどうしようもなく、自分を抱いた男が可愛らしく思えてきてしまう。これってDV男に嵌る女の典型?そう自分を少しばかり哀れみながらも、佐助は「おばかさん」の一言で片付けてしまう。片倉は許しを得て安堵したのか、柔和な微笑みを浮かべる。その笑みを向けられたくって、言いなりになってしまっている部分も少なからず、ある。佐助自身、圧倒的な快楽に呑み込まれるのが癖になっているのだ。

「もう…片付けんの大変じゃん。お茶も冷めちゃったし」
「…俺がやる」
「とーぜん」

佐助は掠れた声でおどけて見せた。きっといつまでたっても、この繰り返し。女ができれば別れるなんて、それは自分には当て嵌まらない。言葉にはしないけれど、自分はひどくこの男に溺れているのだと佐助は痛感した。







在宅×在宅=過剰ホモ